アールの不動産屋連載小説10
こちらのブログもどうぞ ↓ ↓ ↓
http://www.r-group.co.jp/category/blog-s/
社長は本気で言ったのだろうか。築古のアパートの前で俺は茫然と立ちつくしていた。
社長は確かに店舗の裏のアパートと言ったが、どこかのアパートと間違えて言ったんじゃないのだろうか。目の前の2階建てのアパートは今にも倒れそうなくらい古ぼけていた。6部屋のうち2階の角部屋の部屋だけは、ベランダに洗濯物が干してあったが、残りの5部屋はきっと空き部屋なんだろう。こんなボロアパートにあえて入る人なんていないんじゃないだろうか。ましてやあの神経質そうな女性客が住むとは到底思えなかった。
店舗に帰るとちょうど神谷さんがお昼から戻ってきたところだった。俺は思い切って
神谷さんに聞いてみた。
「昨日の会議で社長から裏のアパートにあの「猫の女性客」を案内したらどうかって言われたんだ。あの女性があんなところに住むと思う?」
俺と神谷さんの間ではいつの間にか「猫の女性客」で共通の認識が定まっていた。
「社長が・・・ですか?」
神谷さんが不思議そうに言った。
「そうなんだよ。会議に呼ばれて何かと思ったら、いきなり社長からそんなことを言われて。正直固まっちゃったよ」
神谷さんは、しばらくの間パソコンに向かったまま黙っていた。
「社長が言うように一度、猫の女性客を案内してみたらいいんじゃないですか?」
「え?それ本気で言ってるの?」
俺は神谷さんの顔をまじまじと見たが、いつもと変わらずクールなまま、表情ひとつ変えなかった。
「はい」
神谷さんに聞いた俺がバカだった。この人は、いったいどこまでクールなんだ。。。無駄な案内を今更して、どうしようと言うんだ。ついため息が出てしまった。
「藤森さんが嫌なら私が案内しましょうか?」
神谷さんから思いがけない言葉が漏れた。
「女同士だし」
今までパソコンに向かっていた神谷さんがちらりと俺を見てうっすらと笑った。その笑いのどこかに確信に満ちたものを感じずにはいられなかった。
続く・・・
初めて読んだ方は小説11へ
https://www.zennichi.net/b/rmansion/index.asp?SC=2015/04/19&mnd=20150419
<共有持ち分の買い取り 事故物件買い取り 相続コンサルタント 任意売却>
アール・マンション販売株式会社
お問い合せ