アール不動産屋連載小説11
「じゃあ、神谷さんに任せます」
俺は自分でも呆れるくらいにあっさりと神谷さんに頼んでいた。
それから3日後の昼過ぎに通称猫女性が店にやってきた。女性は俺の顔を見るなり不安げな顔で切り出した。「ほんとに部屋が見つかったの?もう時間がないのよ」
「ご安心ください」
カウンターの奥から神谷さんの低音の声が響いた。神谷さんはいつものセーターにスカートといったラフな服装とは違い、今日は上下紺のスーツでビシッときめていた。
「こちらへどうぞ」神谷さんは女性を応接室へと案内した。
「藤森さん、お茶をお願いします」
「あ、はい」
俺はまるで女社長に指示されたかのようにテキパキと準備をして応接室にお茶を運んだ。女同士ーという神谷さんの言葉が頭に浮かび、俺はそそくさと応接室を後にした。なんだか仲間ハズレにされたような気がして少し寂しい気持ちになった。
それから20分くらいたった頃に応接室から女性の笑い声が聞こえてきた。始終、俺の前では不機嫌だったあの猫女性の笑い声なんだろうか?俺は不思議な気持ちになった。それとも神谷さんの笑い声なんだろうか?そう言えば今まで、神谷さんの笑い声をまともに聞いたことがなかったことに気づいた。耳をよくすますと2人で交互に笑っていた。猫女性を神谷さんに任せて正解だったと内心ホッとした。それから10分くらい経つと、2人が応接室から出てきた。猫女性は来た時とは別人のように明るい表情をしていた。
「今から裏のアパートまでお客様をご案内してきます」
神谷さんはいつものクールな顔で言った。
「はい、お願いします」
裏のアパートは、すでに大家さんが実家の島国に帰ってしまい、うちの店で鍵を預かっていると聞いていた。それにしても神谷さんはいったいどんなトークでを猫女性を説得したのだろうか?俺は店から出ていく2人の後ろ姿をじっと見送りながら複雑な気持ちでいっぱいになった。
続く・・・
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