アールの不動産屋連載小説14
「あの男は?」
俺は猫女性に聞いた。
「このアパートの2階に住んでいる人みたいなんだけど、いつもあんな感じでなんだか気持ち悪いのよね」
猫女性の顔が曇った。
「住人ですか・・・」
確かに普通じゃない感じのする男だった。
「あの人、猫が苦手みたいでうちの子猫たちの泣き声がうるさいって神谷さんに文句言ってたわ」
猫女性が言った。
「それって今日の話ですか?」
「そう、さっき。わたしの部屋を出たところで神谷さんに言ってたわ」
「神谷さんはその後すぐに帰ったんですか?」
「だと思うけど、私が部屋から出ようとしたら神谷さんが出て来なくていいって合図をしたの。しばらくあの男と何か話していたようだったけど、そのうち部屋の外が静かになったので収まって、神谷さんが帰ったとばかり思っていたんだけど・・・」
猫女性は、眉をひそめた。
ふいに、俺は嫌な予感がして二階の階段を見上げた。まさか・・・俺は慌てて二階の階段を駆け上り、男の部屋の前で立ち止まった。年季の入った床がぎしぎしと音を立てた。
「すみません。裏の不動産会社の者ですが、ちょっとよろしいでしょうか?」
俺は男の部屋の扉をドンドンと叩いた。部屋の中からかすかに女性の声が聞こえたような気がした。が、中から人は出て来なかった。もう一度扉を叩いた。叩く右手のこぶしに思わず力が入り、大きな音が廊下に響き渡った。さすがに男が扉を小さく開けて不機嫌そうに顔を出した。
「なんの用だよ」
男は、扉の向こうから鋭い目つきで俺を睨みつけた。
「突然すみません。こちらにうちの神谷がお邪魔していませんでしょうか?」
「神谷?」
「女性社員の神谷です」
一瞬、男の目が泳いだのを俺は見逃さなかった。
「知らねえなあ」
男が急いで扉を閉めようとしたその瞬間、俺は右足を扉に挟んだ。
つづく・・・
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