アールの不動産屋連載小説15
何するんだよ!」
男の声と同時に俺は一気に扉を開けた。次の瞬間、部屋の中から「助けて〜」という女性の声が聞こえてきた。俺は声のするトイレに向かい扉を開けた。するとそこには神谷さんがしゃがみ込んでいた。
「神谷さん!」
俺が神谷さんに駆け寄ろうとしたその時、男が背後から飛び掛かってきた。
「この野郎!」
俺は男をとっさに得意の一本背負い投げで床に投げ倒した。
「いてえ〜」
男はしばらくの間、動かなくなった。
「大丈夫ですか!」
俺は、神谷さんを抱き起こした。
「藤森さん、ありがとう」
神谷さんはほっとした顔で言った。
「さあ、神谷さんになんでこんなことをしたのか話してもらおうか」
俺は床に横たわったままの男に向かって言った。
「だいたいそいつが俺に話しを持ちかけてきたんだ」
男はあごでテーブルの上にある名刺をさした。俺は名刺を手にとり愕然とした。その名刺は常務のものだった。
「常務の名刺がなぜここにあるんだ?」
「常務?!」
横にいた神谷さんが、驚いた顔で俺から名刺を取り上げた。
「この女が、俺とそいつの話を盗み聞きしやがったからやばいと思って閉じこめてやったのさ」
男は神谷さんを睨みつけた。
「盗み聞きされて、困るような話をしてたあなた達が悪いんでしょ!」
「ちょっと待って。神谷さんどういうことか説明して」
俺は混乱しながら二人の間に割って入った。
「この人たち、立ち退き料をがっぽり儲けようとしてたのよ。しかし話してた相手が常務だったとは・・・・・」
神谷さんは床にころがったままの男を指さした。
「立ち退き?」
俺はますます頭が混乱していった。
「実はこのアパートはもうすぐ解体して表のビルを含めて再開発をするの。会社は藤森さんには言っていなかったけど・・・」
「会社の店舗が入ってるビルのことですか?」
立ち退きの話は寝耳に水で、俺はすぐには信じられなかった。
「悪いのは俺じゃねえからな。全部あいつが仕組んだことだ。俺は元々このアパートに住んでいたんだ。大家からアパートを建て替えたいから引っ越してくれないかって再三言われてたんだけど、駅から近くて家賃の安いアパートなんてそうそう無いから引っ越せないでいたんだ。そんな時、あいつが来て、このアパートはうちの会社で買うことになったから、もう少し居座ってくれないかっていうじゃないか。俺がなんだそれ?って聞くと、うちの会社から、相場以上の多額の明け渡し費用を出すようにするから、そしたらその金額の半分を俺に渡すからって言ったんだ。俺はその話にのっただけだよ」
男はさっきまで勢いのあった声とは違い、意気消沈した声で語った。
俺は思わず神谷さんと顔を見合わせた。
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