2013/09/30 8:47:24
風の余話
写真家江成常夫氏の「鬼哭の島」を読む。この写真集は日本リアリズム写真集団「東京塾」に学んでいた時、講師の英伸三先生から勧められていた。当時私が群馬の戦争遺跡を撮影始めていたからである。(現在中断)
「鬼哭」という言葉は「広辞苑」で引くと「浮かばれぬ亡霊が恨めしさに泣くこと。また、その声」とある。著者の前書きに「浮かばれない亡魂が恨めしさに泣く」とある。
昭和16年12月8日の真珠湾攻撃から開戦した太平洋戦争で日本軍が戦った南方の15の島々を2004年から2011年までの7年間取材をした記録である。この「太平洋戦争で戦没した日本人将兵は240万人(厚生労働省)民間人を合わせると310万人。収集帰還した日本人戦没将兵の遺骨は125万7000柱。(平成22年同)いまも100万に余る万骨が南の島で泣いている。「玉砕」という美名で装われた戦歴の島々は、まぎれもなく成仏もできない死者たちの「鬼哭の島」である」と記されている。この遺骨を収集し弔うことを忘れてきた日本。
写真集掲載の1枚1枚に将兵の沈黙の叫びが見る者の心に響く。「早く日本に、故郷に帰りたい。両親に、兄弟に、妻に、子に、友に逢いたい」と叫ぶ声が。
人間の生き方とは、国家とは等など様々なことを考えさせられる写真集である。