2020/10/25 13:09:50

私について #344 (サヘル・ローズ)

サヘル・ローズと言えばエキゾティックな風貌を持った美人、プラス悠長な日本語をしゃべる人で、日本という外国で成功したきらびやかなキャリアを持っている人だと以前は思っていた。


サヘル・ローズはイラン西部のホラムシャルハに近い小さな町に生まれた。1989年2月、イラン・イラク戦争のさなかイラクとの国境近くにあったその町はイラク軍の空爆により壊滅、彼女の13人の家族で生き残ったのは末っ子のサヘルだけだった。壊滅した町への救護隊ボランティアとしてテヘラン大学から駆け付けていた、後に義母となる大学生フローラ ジャスミンに救い出され、その後孤児院で暮らすこととなった。空爆で家族を失ったサヘルは、本来の出生年、出生名が不明となり、義母が推測した出生年や名前を使用することとした。義母であるフローラ・ジャスミンはイランの法律では健常者は養女を取れないため、自分の体にメスを入れさせ子供を産めない体にしたそうだ。サヘル・ローズとは砂浜に咲くバラという意味で、バラが好きな義母が、バラは砂浜には咲かないはずだが、自らの力で困難に立ち向かってほしいという思いで付けた。1993年8月13日、知り合いがいたため義母に伴われ7歳の時に来日した。来日当初の生活は非常に貧しく、2週間ほど公園でホームレス同然の生活を経験したとのこともあったが、その後様々な人たちの支援を受けたり自身努力し、今現在の地位を得た。


昨日、Eテレで「サヘルの旅」という番組があったので、イランの世界遺産の紹介でもする番組かな、と思ってチャンネルをあわせてみた。でも実際の内容は、彼女がバングラディッシュの孤児院や鉄道線路沿いのスラム街を訪問し、ストリートチュールドレンと呼ばれる子供たちと会い話をしたり、敵国であったイラクに行き、そこに住むイラン人家族の実情を聞きながら彼らに生きる意味を伝えるような、かなり深刻な話であった。このイラン人家族の長男は、イラン人としてISと戦うためにイラクに移り住んだが、重い病を患い今は異国の地で療養生活を送っているとのことだった。しかし、その家族の生活は貧しく家族の生活費や治療費をねん出することができない状況とのことだった。もう一つの訪問先は、ISとの戦いの中でご主人を失った未亡人たちを預かる施設で、そこには平和な世の中にいる日本人には考えられないほどの苦しい経験をさせられた女性たちがいた。皆サヘルの話には耳を傾けていたが、彼らの心には、同情してくれる人はいても、その後何もしてくれない、と半ば投げやりになっている女性が多く、その姿を見たサヘルは嗚咽を止めることができない状況にいた。しかし、最後には皆サヘルのもとに行きハグできるようになり、お互いの溝は少し埋まったように見えた。


サヘルの旅先はどこも過酷な過去・現在を持つ人たちが多くいるところだった。彼女には自分の体を傷つけ自分を引き取ってくれた義母がいて、今では異国の地ながら安定した生活ができている自分がいかに恵まれているかを強く感じている。おそらくそんな自分の過去を見つめなおすと、とても安穏と暮らすことはできない、と思っている様子がうかがえた。今は感染症蔓延で世界中の人たちにまた一つ苦労が覆いかぶさってきた。サヘルよ、思い込みすぎないよう生きてください。






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