私について #266 (貸倒引当金)
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金等の金銭債権に対する将来の取り立て不能見込み額を見積り、実際に債権回収が不能になった場合に繰り入れることができる金額のことである。仮に貸倒引当金を計上しておけば、それら金銭債権が取り立て不能状態に陥ってしまっても、その引当金を充当し、経理上大きな損失が突然発生することを防ぐことができる。
2017年4月、日本銀行は、ここ数年の地銀や信金の貸倒引当金の計上額は歴史的に見てきわめて低い水準となっており、各融機関において、リスクに見合った備えが必要だとリポートで警鐘を与えた。2015年度の貸出残高に占める貸倒引当金の比率は、地方銀行等で0.7%と過去10年の平均である1.2%から0.5ポイント低下、信金も1.3%と過去10年平均1.7%に比べて0.4ポイント低下した。なぜこれほど引当金が減少したのか。主因は景気回復を受けて、企業の業績や財務内容が改善し、倒産が減少していること。借り手の債務不履行が減少したため、金融機関からすれば、貸倒引当金の引き当て比率は少なくて済むことになる。
日銀はリポートの中で、地銀の融資方針の変化に応じた新たなリスクへの備えの必要性を指摘した。人口減を背景とした金融機関の収益性が低下する中、新たな分野であるアパートローンや医療、福祉関連向けなどの融資を積極化している地銀が増加しているが、過去の融資実績が乏しく、将来への引当金不足が生じやすくなっていることを指摘している。
宅建業界に身を置くものとして、アパート等賃貸住宅建設向け融資が増えてきているのは肌で感じている。これら融資は、富裕層向けの節税目的の融資も入っているであろうが、建築後のキャッシュフローだけをあてにした投資家向けの融資もそれなりに含まれていることだろう。日本の深刻な社会問題である空き家問題。「その空き家の多くが賃貸住宅」で占められている昨今の状況を考えれば、金融機関はもっと将来を見据えた慎重な融資姿勢をとるべきだろう。
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