2012/06/26 17:51:57

サブプライム問題 #3

サブプライム問題で一番印象に残っている出来事は、米国大手投資銀行であったリーマンブラザースの破綻だ。ロンドンで債券部門に身を置いていた者にとっては、他にも欧米の大手銀行が公的資金を投下されたり、他の健全銀行に統合されたりしたことも、強く印象に残っているが、やはり、リーマンブラザースの破綻はいろいろな意味で忘れられない。


シティグループ、ゴールドマン・ザックス、モルガンスタンレー、メリルリンチもサブプライムにどっぷりとつかり、各社とも死線を彷徨っていたが、銀行として公的資金を投下されたり、サブプライムの影響をあまり受けていない大手銀行に統合させたりして、米国政府は彼らについては存続を図った。しかし、リーマンブラザースについては、銀行としてのベースを持っていなかったこと、他の健全な大手銀行に統合することを難く拒否されたことから破綻させた。米国政府は、お膝元が発症の地となったサブプライム問題と言うウイルスを放置し、それを世界中にまき散らかしたままにした。そして、その後、政府が投資銀行業務に大きな制限を加える法律を作り、投資銀行ビジネスの地位を大きく下げることに尽力した。結果、世界の市場から「リスクを取ってリターンを得る」リスクマネーが激減した。


現在、世界のメディアは欧州ソブリンリスクの報道合戦で沸きたっている。しかし、サブプライム問題に比べれば、この問題は、メディアが騒いでる程のものではないと言える。サブプライム問題の怖かったところは、これに絡む市場参加者の特定とそこから発生した損失を推定することができなかったことだ。米国政府は、最終的にリーマンブラザースが、どれくらい損失を抱えているか認識できなかったので見捨てることにした。一方、ソブリンリスクは、市場参加者や損失が推定できるので、対応の仕方を見出すことができる。ただ一つ言えるのは、サブプライム問題発生以降、投資銀行が力を失ったために、積極的な市場参加ができなくなり、市場の動きが一方的になってしまい、それほどでもないリスクが、とても大きなリスクに見えてしまうことになっているのが現状だ。最近のJPモルガンの損失は一つの良い例だ。投資銀行に勢いがあったころであれば、市場参加者が多くあり、市場の動きも上下あったと思うが、現在は比較的元気なJPモルガンが一人頑張ってしまい、結果、大きな損失を抱え、政府に叱られるという事態になったことが想像できる。


サブプライム問題の発端となった商品は、本来は「証券化ビジネス」の普通の一商品であった訳だが、バブル期に組成され、それが破裂したと言う意味で、また、投資銀行の地位を大きく低下させてしまった、そして、今もその亡霊が世界の市場につきまとっているという意味で、とても不幸な商品となってしまった。







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