私について #135 (辛い現実)
2008年7月、ロンドン駐在の最後を飾るべく、夏休みに自分のとても憧れの地であった、シリア・ヨルダンの旅に出かけた。シリアの首都ダマスカスはとても古い歴史を持つ街で、一部は世界遺産に指定されている。古代ローマ時代からの遺跡、十字軍の遺跡、オスマントルコ時代の遺跡、旧市街と威厳のあるモスクと、街を散策していると世界でも類を見ない歴史のある街であることが理解できる。スークを歩けば、目が大きく鼻の高い美形の男女が楽しそうにしていたのが思い起こされる。自分らの宿泊した宿は、旧市街の中にあり、その宿の入り口は、くぐり戸のような高さの低い木の門をかがみながら入るような感じの建物であった。石造りの重厚な建物の中に入ると、そこは吹き抜けになったロビーがあり、如何にもイスラム的な雰囲気を醸し出していた。チェックインする際、気さくなご主人が日本人である我々を快く迎えてくれてダマスカスの観光についていろいろアドバイスをくれた。そして、そのご主人曰く、私はこの宿を日本人観光客に利用してもらいたい、と言っていたのが印象的だった。
そのシリアの内戦において、政府軍はサリン等化学兵器を使用した可能性が疑われている。以前から化学兵器使用の恐れが言われていたが、いよいよ、ほんとにそれを使用したようだ。権力を保持するため同じシリア人に対し化学兵器を持って、抗戦する大統領。過去数々の内戦を遠目に見てきたが、このような残忍な権力者はいなかったのではないか。
シリアのこの情勢を見て、米国の軍事介入の準備が進められているとのこと。米国は友好国との調整を急ぎ、水面下では、シリア側にいるロシアに対しても何らかの根回しをしているのだろう。過去たびたび軍事介入で、数々の非難を浴びせられてきた米国であるが、シリア情勢に対し、やはり、黙ってはいられないと言うことなのだろう。シリア国民の生命が脅かされている中、米国の軍事介入に期待するしかないのか。どういう形であれ、今後も罪のない人たちの命が奪われていくのは避けられないことだろう。
恐れおののいて生きている人たちが多くいる、美しい街並みが破壊されているシリアのことを考えるととても辛くなる。
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