減額 たらこ代
嘉子の創作「減額」続きです。
3度目の呼び出し状が管理会社から住民有志代表に届きました。その書面には、またも内容はほぼ同じ。説明するから○月○日に取締役会の会場に一人で来るように書かれています。
先日、管理会社職員の手土産の「たらこ」は食べ終わったばかりのタイミングでした。贈答用のそのたらこは、宮城県名物だけあってなかなかの美味です。宮城県は実は全国有数のたらこの生産地。明太子で有名な九州地方の産地への原料も、宮城県から運んだ材料を加工して名産になっていたりするのです。特に石巻港の出荷量が多いのですが、たまたま今回は他の周辺の港産です。地元でけっこう人気のお店のギフト製品でした。
あの時職員たちは、ポケットマネーで持参したお土産のような顔をして先輩有志代表に手渡ししました。
大家さんを通じて確認した、ヒラ社員ヒラマからの確認情報によると、このたらこは管理会社の経費で購入したものと判明しました。しかも、市内にわずかな時間、出向いただけなのに「出張旅費」まで経費で二人分の請求が上がっているとのことです。
もう一人の先輩住民も、おいしいたらこでしたので食べてしまいました。その後で、この出張旅費・管理会社支払いの事実が知らされたのです。実は、慎重な彼は、なんとなく資金の出所が気になるので大家さんと連絡をとってみたのです。その流れで、管理会社からの出費で手渡されたものだとわかったのです。
預かり金の3000円の、不正を疑われるからくりを見破った先輩住民は、職員個人からのものならともかく、管理会社からの付け届けは、この問題を抱えた時期に貰ったままの状態では不愉快です。管理会社の事務へ連絡を入れて一円たりとも残らず「たらこ代」を支払うことに手配するつもりです。
たらこを手土産にさせて、新社長は住民二人に何の目的で訪問させたのでしょうか?あいかわらず、文書回答を拒み、3度目の「呼出状」をうけとった有志代表は長い手紙を書き始めました。住民の主旨は何度繰り替えしても揺らぎません。
「文書には文書で回答するように。不明なら不明点を文書で質問すること。日当稼ぎのような職員派遣はやめなさい・・・。」つぎからつぎへと、達筆な有志代表の思いが綴られていきます。住民たちは信頼する有志代表の、呼び出しには応じない、文書回答を求める判断を全員一致で支持しています。
次回の質問に期日までの「文書回答」がない場合は、公開質問、マスコミ関係機関への相談、公の機関への通報、訴訟などの選択肢があります。それらの段階を踏むことを十分に想定して文書回答を求めているのです。
断じてこのまま放置はしないのだという合意があります。不屈の姿勢で臨むことは決まっているのです。3度目。仏の顔も3度までという言葉があります。長い返事には固く揺るぎのない力がこめられているのです。
※嘉子からのおすすめです。
明日から連休ですね。地方のおみやげで、菓子折りとあわせて、魚貝類を考えてみてはいかがですか。先日、石巻産の粕漬けをいただいたのですが、とってもおいしくて大喜びでした。石巻はかまぼこも有名。ブログのように、いただいた事情がいろいろあっても、つい食べちゃうほどのおいしさです。ぜひ三陸の海の幸をご賞味ください。
はやぶさ
角田の宇宙センターで話題の小惑星探査機「はやぶさ」を見て来ました。ムードを盛り上げるために、小学生用の宇宙についての本を図書館から借りてきてにわか天文ファンを決め込み、ほんの少し予習をしておきました。ついに願いがかないました。当日の天気はあいにくのもの。会場は、小雨模様もなんのその。長蛇の行列でした。でも、それも苦にならないほどときめきました。
このときばかりは仙台市民でよかったなあ。と感慨ひとしおです。関東方面ではやぶさ公開のニュースを目にしてから、きっと角田の宇宙センターもそのうち・・・。と期待していて注意していました。ついにその日が来たのです。天文学の知識は恥ずかしいレベルしかありませんが、単純に、きれいな星空を見上げることが大好きです。「宇宙」ときいただけでわくわくします。
そういえば、月の石の時は子供で見るチャンスがありませんでした。アポロが月に到着して、人が歩いた感動はよく覚えています。生きてるうちに宇宙に関連する実物を見たかった私。天女になった向井千秋さんにあこがれ、ついでにダンナさまの本を読み。最近は山崎さんの美しさにうっとり。女性宇宙飛行士ほどかっこいい女性はいない・・・。なんてほれぼれするのです。もちろん読書に関しては、毛利さんからスタートしてますよ。
はやぶさには人は乗っていませんが、もはや、日本人にとってはただの機械とは感じられません。擬人化した日本のヒーロー。英雄的な存在に感じてしまいます。
長い長い行列をさばいている係員が「はやぶさは7年かけてもどってきましたからね。」と言うと、あたりはほんのりと明るい笑い声。はやぶさの旅の時間に比べたら、私たちの待ち時間なんて、ささやかすぎるおおらかな気持ちになりました。
どんな宇宙船よりも遠くへ旅をして、苦難のトラブルを克服して、やっともどってきてくれたはやぶさ。長旅の苦労もみせず、きれいな白いパラシュートや、ちいさな扇風機の丸い部分ていどの入れ物が、ガラスケースの中にありました。
行列で待ちにまった見学時間は一瞬でしたがうれしい実物とのご対面でした。展示品は大きな任務の割には、いたってかわいらしい大きさで、それも、魅力的でした。東北弁でいうところの「めんこい」探査機でした。
今回のはやぶさは、遠くからあらゆる苦難を乗り越えて2010年6月13日に、地球に帰還。ちゃんともどってきたわけです。さらにもっと良い知らせが。わが宮城県の地名である、「角田」の名称がなんと、このはやぶさの旅先のさつまいものような形の小惑星・イトカワの一部につけられているらしいのです。混雑していて、場所まで理解しきれませんでしたが、係りの人が子供たちに熱をいれて説明していました。ますます、はやぶさが身近になりました。
減額 見殺し
嘉子の創作「減額」つづ゜きです。
管理会社の新人取締役たちは少しでも上の立場に立ちたい・・・。ポストにかける執念はすさまじいものがありました。そのためには、あくまでも、社長と専務にゴマをすることが望む地位を手にする最短、最速の方法であると思っていました。
どれだけの時間をあの二人と上層の役員たちへのおべんちゃらに費やしたことでしょう。われながら思い出すと吐き気がします。腹の出た役員が靴紐を結べないため、ひざまづいて靴まで履かせてやったたことさえありました。取引先の女性に取締役の立場を利用して、強烈なセクハラをしている役員を止めることさえしませんでした。
気持ち悪がりながらも、取引のために顔を引きつらせてガマンをする人。ガマンできずに反撃して取引停止になった女性・・・。どんなときも、相手がオンナでもオトコでも・・・。役員のおもちゃにされ苦しむ人達がいても、見て見ぬふりをしとおした・・・。下品な役員の行動に反感を持ちながらも、反対できませんでした。事実上、役員の横暴に加担したことになりました。
誰かの悲しみなんて、知ったことじゃない。オレの出世だけがすべてさ・・・。そんな取り憑れた欲が優先していました。ポストの魅力にくらべたら、そんな程度はガマンができる範囲なのです。トップに立てば、あとは安泰です。登山の8合目は苦しくても、目標があればいいのです。
良心の呵責なんてものは、出世のためには捨てたはずなのに、やはり、人として心にさざ波はたったものでした。
しかし公の機関へのタレこみにより、もしかしたら社長と専務が処罰を受けることもあるかもしれないという難題に配慮する必要が出たのです。トップ二人が交代になった場合、3番4番がトップに上がると単純に考えることは危険です。新社長の取り巻きは、同罪で罪人として一掃される可能性が十分にあります。取引先に、クリーンな管理会社をアピールするために、まったく日陰の存在の取締役が、急伸することだってあります。
何より自分たちが、貧乏くじを押し付けられる危険が大きいのです。政治だって運転手さんが自殺したり、秘書が逮捕されても、トップがどうにかなるまでには時間稼ぎがあります。すると、この「預かり金」請求書問題で、トカゲの尻尾にされるのは、いつもおべんちゃらに徹した自分ではないのかと、いやーな胸騒ぎがしてしまいます。社長と専務に「便利な男」としてアピールしたことが悔やまれます。
気分転換のつもりで、テレビのスイッチを入れました。テレビのニュースでは、交際相手の女性が苦しみながら、死亡した経緯を語っています。救急車をスグに手配しなかった・・・。自分の保身のために・・・。人の命よりも、わが身の保身を優先したこの元俳優の結末。裁判員裁判の内容を伝えています。
「自分は自分のしてきたことが、あの役員やこの元俳優の要素がほんのかけらも無かった。ずっとましだったなんて、言い切れないな・・・。程度は相当の違いがあるが、だけと、真っ白じゃない。」
命・・・というほどの事ではないが、嫌がる女性を目撃しながら、1度ならず、オレは彼女たちを正面からちゃんと助けることはしなかったんだから。もちろん、その後で、できる範囲のフォローはしたつもりだが・・・。ちゃんと助けるつもりなら、その場で行動するべきなのは子供だってわかる倫理感のはず。いい大人の男がそれすらしなかったんだ。オレは・・・。ったく。カッコ悪いぜ。
チャンネルを変えても、バラエティで芸能人の○尾学被告の罪状を解説しています。苦しむ女性を見殺しにした。見殺しにした・・・。新人役員たちにリフレインのようにまとわりつくニュース。この容疑者も捕まるまでに時間がかかり・・・。やがて・・・。不安の芽生える気持ち。新人取締役はリモコンでテレビの電源を切りました。
「どの角度から見ても、真っ白な人間なんてこの世には存在できるはずなんてないのさ。それなら、勝ち組に乗るし、乗り続ける。」次の勝ち馬は誰になりそうか。管理会社の出世予想表の作成を始めました。
お問い合せ