減額 組織再編B
嘉子の創作「減額・番外編」つづきです。
ふと、日常のことに気付いたヒラマは電子レンジから冷めたピザを取り出しました。「そういえば、昔の総理大臣が外国メディアから、冷めたピザよばわりされちゃっていたよなあ。」と小渕恵三元総理のことを思い出しました。自国の代表をバカにされたのに、ちゃんと擁護しない、身内の日本国民への白状さに苛立ちを感じました。
あの頃は景気が下向いていましたが、就任後には大胆な政策を打ち出していました。懸案の問題を議決し、大胆な政治手法で景気回復もしました。難局にさらされ激務の果てに道半ばにして散ってしまいました。
歴史を振り返れば、平和への思い、保守本流としての国を愛する法案の成立、功績は多くあります。平成の世の進化した社会の仕組みを形づくっていたのでした。命がけで働いてくれている政治家への、やさしい支援が国民にはないのかなあ。ヒラマは政治家の割りにあわない扱いを、いつもニュースをみながら気の毒だなあ。とおもうのです。
今は違った政権がこの国を仕切っています。コンクリートから人へ。不動産業者や建設業界にとっては、痛い政策です。テレビのスイッチを入れると、ニュース番組では、唯一の目玉政策。この日の昼間に行われた事業仕分けの様子を映像で流していました。3回目の今回は注目度も低く、尻すぼみの様子です。
白い服を華麗に着こなした女性大臣が、天下り根絶のためを理由として、「公益法人」を「仕分け」していました。
ヒラマは、天下りってそんなにメリットがあるんだろうか。公益という名前のせいで、税金が余計にかかるなら、益は益でも、損益じゃないのかなあ。たいした仕事もしてないらしいし。と、さっきは心で批判したはずのマスコミの論調にすぐに染まっています。ニュース番組のキャスターの口調を丸写しで独り言をいいました。
天下り組織に勤務する方の、転勤に伴う賃貸マンション契約のため、案内をした時の様子を思い出しました。あの時は、大分仕事が暇だったのか、引越しするのが官僚キャリアなのか、どれほどその組織にとって影響力のある人なのか、理由ははっきりとはわかりません。でも、独身オトコのマンションを借りる、お部屋探しのためだけに、大の男たちが背広姿でどっと現れました。なんとまる一日、運転手付の上に四人がかりであちらこちらの物件を内覧し、ゾロゾロとごたいそうな大名行列をしたのです。
あの、市民感覚からはかけ離れた高額報酬の仕事内容をヒラマがわかった瞬間でした。多額の給料の勤務時間がこんなことに使われてしまっていることを、ヒラマは目の当たりにしています。でも、せっかくのお客様ですから、もみ手をしながら相手をしました。
管理会社の物件にご入居いただくには、超一流の上客です。賃料支払の滞納の心配はまったくありません。多くの場合、身なりも生活習慣も、大変きちんとしていますから物件全体が上質な空気の物件になります。おかげさまで、すばらしいお部屋のご契約をいただき、感謝したものでした。もちろん、お住まいいただいてもなんのトラブルもあるはずもなく、大家様も大変喜んでいらっしゃいます。
ヒラマの心理としては、義憤にかられるニュースと、自分の商売へのメリットを計りにかけると、自分のノルマ達成に貢献してもらえましたので、「ビバ天下り」となるのかもしれません。歩合も少しもらえたから更にルンといった気分です。
冷凍ピザ一枚を食べるだけでも、いちいち政治と歴史と世の無常が登場してしまう秋の夜のヒラマでした。
さて、腹ごしらえが終わり、ヒラマはとりあえず、疑問点をノートにメモをしました。冊子に付箋を貼り付け、明日の電話確認先をスケジュール帳に書き込みました。
つづく
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