減額 決算期
嘉子の創作「減額」久しぶりに本編です。
3月の決算次期を迎えた法人はてんてこまいの忙しさです。女性事務員たちは、残業をするようなヒマはありません。おなかをすかせて夕飯を待つ子供のためにも、さっさと勤務時間内で仕事を終わらせないといけません。
「まったくもう。なんなのよ。このわけのわからない金額は・・・。」どのように処理していいか不明な3000円のせいで、春先に伝表の表記にとまどいました。昨年と今年で、預かり金だったり仮受金だったりするお金があるせいです。
「たかが社宅の家賃でなんで私がこんな面倒なメにあわなきゃいけないのよ。」真冬並みの寒さが戻った東北の地方都市。ビルの片隅。女子更衣室のロッカーから、おおきなかばんを手にした彼女は心の中で絶叫しバタンとスチールドアを閉めました。
一分でも早く帰り、買い物と食事の支度をしなくちゃならないのに、経理部長に呼び止められてしまったのです。この程度じゃ残業代も出ないけど、主婦の1分はとても大事なんです。
日ごろから仕事処理の早いベテラン事務員は、とうの昔にパソコンの経理ソフトに他費用の入力は終えていたのです。あとはキー操作一つでささやかな中小企業の決算書は完成できるはずだったのです。ですが、昨年度と今年度の科目が合致しないわけのわからないものがあるせいで、部長は会計士から事情を聞かれました。結局彼女に問われて・・・。で、彼女がとばっちりで貴重な時間を足止めされたのです。
春先には、管理会社に問い合わせたりもしましたが、仮受金とか預かり金とか言いながら、明確な答えがないまま、お金も返してもらえず、この多忙な決算次期に突入してしまったわけです。
「絶対にあの、アパートの管理会社は許さないわ。私の貴重な時間を奪う権利なんて無いはずよ!!」恨みにも似た感情が芽生えました。
つづく
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