減額 卒業シーズンB
嘉子の創作「減額」続きです。
母親は整理しました。息子は彼女との同棲を母親と大家さんにばらされて、アパートを追い出されることが怖かった。管理会社には母親が直接送金をしている。だから、何も言わずにいれば母が家賃を払い続けるはずである。
管理会社の担当の口を封じるためのお金については、母が払い続ける。ただし、卒業までの数ヶ月分で完了することである。転居にかかる契約その他諸経費と比較すると、ほぼ同額の損失だ。引越しするよりは手間と騒動が避けられる・・・。しかし大家さん指定の新しい支払い先への費用が必要だ。卒論も終わったし、就職先も内定があるから、バイトをすればいいや・・・。
彼女のことについては、卒業してから、あたかも同棲はなかったふりをして、彼女と自分の家に正式に挨拶に行って順序ただしく交際を開始して、清純な交際期間を設け、プロポーズに至ったということにしたい。交際期間中に内緒で同棲していたとしたら、彼女の両親に軽蔑されて反対されてしまったら大変だ。だまってさえいればいいことじゃないのかな。
バレずに事をすませは、結婚するときに、両家の親に叱られずにすむだろう・・・。このように考えて、若い二人は、この息子の母親に賃貸アパートの家賃減額と管理会社変更の騒動について、ひた隠しにするに至った・・・・。彼女の荷物は、今は3月。なので、フリーレントで早めに入居できるお得な物件を契約して、もうあらかた運び終わっている。だから本日ここには彼女の荷物がない・・・。
なるほどね。母親は、若いモノの考えそうな、作戦じゃないの。と処世術を考えた息子の成長を少し喜びました。しかし、ほめることはできません。自分だって若いときには、恋の一つや二つはありましたから、全く理解できないわけじゃないけど、母親としての立場では、叱ることが愛の証です。
母親は、それにしても、ちゃっかり家賃の集金権限もないくせに、ワカイ男の子をおどかして、家賃を二重取りしていた昔の管理会社を懲らしめてやろうとおもいました。息子の落ち度がゼロとは思いませんが、入居者の契約違反をネタにして、管理をはずされたアパートの家賃をそのまま取りつづけるだなんて・・・。
詐欺師そのものです。それ以前に、全入居者を対象に搾取した減額家賃の差額預かり金こそ大問題です。断じて放置はできないと強く感じました。
「なんて呆れた会社なのよ。だから、大家さんに管理をはずされたんだわ。大家さんもお気の毒ね。ここまでの文書を出すまでに、いろいろおありでしたでしょうから・・・。」と気遣いました。
さて、息子と、彼女とがはじめてそろうのが待ち遠しい母親です。久しぶりにマナ息子と夕食を囲んで、「元管理会社掃討作戦会議」を始めなければなりません。
まずは、そもそも息子の賃貸借契約違反がいけなかったのです。この件のお詫びと対応こそ自己主張以前に必要です。
つづく
お問い合せ