減額 株主総会対策
嘉子の創作「減額」続きです。
管理会社の上司と尾宅はいつもの居酒屋にいました。この日はさわやかな5月晴れで、初夏の日差しを感じる夕方。カウンターに並んだ二人の前にはキンと冷えた「とりあえず・・・」の生ビールがマスターから差し出されました。軽くジョッキをあわせ乾杯のポーズをとる二人・・・。
一口目は、いつも豪快に流し込むはずの上司に異変がありました。大好きな生ビールのジョッキの減り方がいつもよりもゆっくりなのです。こんなことはめったにありません。尾宅は上司に尋ねました。「なにか心配ごとでもあったんですか?」と尾宅。すると「オレが総会対策係りになっちまったんだよ。」と上司。「それが何か問題でも?」と尾宅。
「あるに決まってるじゃないか。去年、君たちのアパートで大家さんの値下げした家賃を預かり金として、入居者たちから集金していたことがあっただろう・・・。」と声をひそめました。
きけば、5月最終の日曜日に勤め先の不動産管理会社の「株主総会」をすることになった。例年なら平日にするのだが、会場が震災でとれずに、日曜日開催となってしまった。せっかくの日曜日が台無しになったことで、家庭サービスができなくなり子供たちと奥様に「むつけられた」ことがまず第一の理由。※むつけるとは、石巻弁です。拗ねることと、むっつりとふくれることの様子をあらわします。(嘉子の東北弁講座でした。石巻では日常語です。)
そして、最大の理由は総会対策係りとして、総会が開催される前にあらかじめ手を打つように対策を講じろ!!と社長に命じられたことでした。
頭を悩ませているのは、その預かり金処理について、おそらく株主の相当厳しい指摘があるであろうこと、その答弁に整合性を持たせるだけの会計知識がこの自分にはないことです。「オレは不動産の取引なら得意だよ。でも、会計士じゃないから、こまごまと質問されても、頭のいい株主さんたちに理解してもらえる自信なんてないんだ・・・。」と暗い表情です。
「もともと、とるべきでもないお金を、ちゃっかりごまかして集金なんかせずに普通に値下げして入居者をよろこばせてさえいれば、ぜんぜん問題なんかないことだったのに・・・。」と預かり金を集金した会社の取締会の行動そのものに納得がいかないのか・・・。上司がごもごもと、こぼします。その尻拭いの答弁をこのオレが舞台の上でさらし者覚悟でさせられそうなのが・・・・。とにかく納得がいかないんだよ。とも・・・・。
どうどうめぐりで果てしないくどき話を尾宅は辛抱強く聞き続けました。上司の気持ちをある程度吐き出させた後のことです。
尾宅は「それなら、取締役会で財務事情に精通した適任の人にやっていただけばいいじゃないですか。」とはげましました。上司は「そんなに、会計帳簿に精通した人っていたかなあ・・・。」とメンバーを数えあげながら、〇×で頼めそうな人を特定しようとし始めました。メモ用紙を尾宅がビジネスバックから取り出しました。
「社長命令に逆らうってことは、首を覚悟ってことにならないかなあ・・・。」と上司はお通しの小鉢を割り箸でつつきました。
つづく
税金関係の延長
自動車税や固定資産税関係が震災の影響を受け、納付期限を延長したり・・・といろいろな配慮がされています。
いつも、税金の請求書が定期的にやってくる季節で、社会的意義は理解しながらも「払う」となるともったいない気分になっていたことも確かです。例年の時期に、役所から書類が到着しないからといって、今年の分がタダになるわけでもないのですが「払う立場」もありがたくて仕方ない。神様に感謝しなくちゃ・・・。と今年は特別な感情があります。
理由は、自動車と家が流されずに無事だったからです。当店にご来店くださる多くの方は津波の被害を受けてしまわれた方々がおおいのです。家が無事でも、たまたま、修理に出していた先の車屋さんが新港方面で、水につかってしまった。ということもあります。なまなましい体験談を伺うなかで、無事である奇跡を感じます。
そんな宮城県の中にいながら、とにかく車の形と、機能が維持できるのだから、自動車税にとやかく言うなんてバチあたりになりそうな見方になってくるのです。納税こそが、募金以上に被災者を助けることに直結する・・・。などと「納税の義務」について再認識する今日このごろです。たぶん、建物の固定資産税の納付書も神棚に供えて拝みたくなるかもしれません。
それにしても、津波被害の地域の土地建物の固定資産税や都市計画税・・・。免除したら税収が減るし、復旧にはお金がかかるし・・・。ちいさな小さな財源の乏しい市役所や町役場の行政のとても難しい仕事はずっと続くのですね。
防災グッズ自慢
東日本大震災の後、あいさつがわりの話題が「そのとき」どうしていたか?その方をとりまくご親族たちの安否確認から・・・が話の順序です。対面が久しぶりの人であろうと、初対面であろうと、道端の人であろうとも・・・。直接会話する人全員と、そのときの状況で、いかにそれぞれが大変な思いをし、のりきったのかを確認しあっています。
そして、このごろは、いかに防災に備えているか・・・。といった実務情報の交換も欠かせません。自分こそが、ナンバーワンの防災人間であることを競うようなトーンでやってしまっています。
なにせ、地震が怖くてたまらない私です。とにかく、初期のころは、開店している100円均一をくまなくわたり歩き、ほとんど毎日買い物へ行っていた時期もありました。が、さすがに落ち着きました。きりがないですしね。
会う人ごとに、懐中電灯をみせびらかし、どこで買い求めたか、どこの店が品揃えがあるか・・・。を教えると、相手からもなかなかのオリジナルな工夫を教えていただけたりします。
で、今日のお昼ごはんですが・・・。これからは、非常食の賞味期限との戦いがはじまりそうです。夏をまたぐと、なんとなく劣化してしまうのも心配ですし。事務所には非常食を備えてはいますが、例によってやっぱり乾パンが好みではないため、結局、お菓子とかレトルトやら、インスタント食品やらをそろえています。
乾パンに変わる主食については、熱をくわえず、調理不要なものとして自分なりに考察。もちで失敗したので、今回は即食べることができる「コーンフレーク・ドライフルーツ入り」にしておいたのです。栄養バランスもいいはずだし。難点としては、細かいから手づかみするにはいまいち。で、牛乳がないと、味もいまいちそうなかんじも・・・。この弱点対策としてコーンフレークとサランラップとを一緒に保管しています。牛乳はあっさりとあきらめています。
まさか平成の世に、古典の伊勢物語のお話で出てくる旅人の携行食品 かれいひと呼ばれる干し飯というわけにもいかないでしょうしね。
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