2011/06/03 15:49:20

怖がることはないよ

会う人ごとに地震が怖かった。と繰り返して生活していたのです。相手も「そうだったよね。」というのが定番でした。でも、初めて、地震にたいして「?」という反応のシルバーグレーの知人と会話できました。紳士は青森県在住です。


もちろん紳士も日本列島にいたので怖い思いをしているはずなのに、反応にお決まりの手ごたえがありません。拍子抜けです。そしてあっさりとこちらに問いかけてきました。「いったい何をこわがってるの?。もう怖いものなんてないでしょ。」と穏やかに語りかけてくれました。


地震を思い出しては、ああだ、こうだと騒ぎ立てて情報収集に取り付かれていた私。紳士のおっしゃるとおり、体も無事で、振り返ってみればこうして毎日ご飯も食べています。


「だって。お店閉まったときは餓死するかもってすごく怖かった・・・。」と、寒い店の外で何時間も並んだ記憶を披露して反論しました。数日間の悪夢・・・。


すると「青森だって、数人ずつしか店に入れなかったよ。何時間も並んだよ。品物だって止まってこなかったよ。」とのこと。でも、もう、その困難を乗り越えたのだから、この先をそんなに案じることはないのだと、ゆったりと対応してくれました。


大人だなあ。と、人生の先輩の威厳に感動。この落ち着きこそが会社のリーダーをいつまでも続けた風格なのでしょうね。紳士との会話の後。なんだかもう、本当に怖いものなんてないような、重荷が一つ軽くなったような気分になりました。





2011/06/03 10:09:28

減額 最終回

嘉子の創作「減額」つづきです。


会社の株主総会対策を命じられた上司はかなり早く会場に来て準備をしていました。尾宅も手伝いをしています。結局二人の間では妙案は出ずに、ついにその日を向かえました。総会の会場で出たとこ勝負・・・。しかないという開き直りが上司の胸を去来しました。


尾宅にアパート住民の監視活動までさせて、会社の秘密を守ろうとしてきたのに。そんな他人には言えない葛藤が上司の心にはあります。ストレスの少ない仕事に転職するほうが自分の精神安定のためにはいいのかなあ。と自分の生き方を模索したりもしていました。


当日は淡々と議事が進み、あっけなく「シャンシャン」で閉会しました。出席者の誰もが「事なき事」を選んだのでしょう。いつもと同じ年のように、いつもの議案が静かに粛々と質問も返答もないままに・・・。「委任状」の数が充足していていたためすんなりと終わりました。


あれほど会社の取締役たちが心配していた大家さんの出席はありませんでした。アパート管理をはずしたことでこの会社との縁を断絶したためか、興味を失っているのかどうかまでは取締役ではない上司と尾宅には不明です。わかっているのは、ただ不動産管理会社の社員にとっては、「無事」にこの日が通過したことです。会社の決算書には小さく「預かり金」「仮受金」の項目があります。社長からの経過説明はありませんでした。


数字の羅列の意味。追及を放棄した議場。多くの株主は問題の存在に気付いても気付かなくても・・・・。自分の意思よりもただやみくもな同調を選びとったかのように静か過ぎる議場内の時間でした。


半日で仕事を終えた尾宅と上司は、どちらともなく歩いていました。いつしか穏やかな初夏の日差しの中で、法子さんのバルコニーが見える位置に立っていました。青い空を眺めました。


上司「ここで尾宅さんとあいましたよねえ。あれから1年。けっこういろいろありましたね。」と苦笑いをしました。


尾宅「ええ。あなたのせいで、私の職場まで変わりましたよ。」とぽんと上司の肩をたたきました。


上司の机には本日付でヒラマからの辞表が受理してあります。減額問題の顛末を見届けたヒラマは大家様の紹介で次のステップを選択しました。尾宅はこの職場で頑張るといいます。上司は、今日の総会が無事だったので、そのままこの不動産管理会社の席にいることにしました。


減額問題、震災・・・・。


そんないろいろが、たった一年に起こりました。社会問題と自然災害が、自分たちの考えを根底から変えつつあることを感じはじめていました。


アパートにも建物被害が少々ありました。住民たちはエントランスのインターロッキングのでこぼこをかわしながら出入りしています。地面が液状化したためです。誰一人、尾宅と上司に気付かずにいます。減額問題が発覚した現場。このアパートの住民は退去したり新規契約をしました。談話室の顔ぶれは変わっているのです。


アパート入口に張られた1枚のカレンダー。渓流の涼しげな風景写真がそこにありました。


逆流に逆らうの木の葉は1枚程度。多くは流れに押し出され風と波に身を任せ、流れのままに生きる・・・。新聞の表紙には造反議員一人の処分について取り沙汰されていました。


会計士が「返金」を指示し査察が入り、そのせいで人事の刷新が後日余儀なくされることなど、その日の株主に予見できるはずもありません。ことの深層が住民らの白日にさらされるには、なおさらに長い長い歳月を要するのでした。








会社概要

会社名
(株)ネクサス
カナ
グラントップ
免許番号
宮城県知事免許(2)0006306
代表者
引地 由花
所在地
9840032
宮城県仙台市若林区荒井2丁目18−10
TEL
代表:022-724-7780
FAX
代表:022-724-7790
営業時間
09:30〜17:30
定休日
土日・祝 毎週水曜日午後
夏季・年末年始・大型連休
最寄駅
東北線南仙台
バス乗車4分
バス停名東中田六丁目分
バス停歩3分
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