釡神様 おひさしぶりです。
その紙は実家の台所には常に貼ってありました。よその家にもたいていあったように記憶しています。仙台の今の私の家の台所には、残念ながらありません。
仙台暮らしをはじめた最初のうちは台所に立つたびに、「何か」が不足している寂しさとか、落ち着かなさがありましたが、もはや石巻と仙台暮らしの期間がほぼ同じになり、その「神様の紙」はいつの間にか意識からなくなっていました。
その紙とは「釡神様」のお札です。火伏の神様として石巻地方に限らず私の親戚とか訪問先の台所にはあるのが当たり前だったものでした。
昨日、みちのく杜の湖畔公園で、釡神様の展示があり、たくさんの木のお面のような神様が古民家の展示室にかけてありました。そこに2、3枚ですが紙の神様のお札があり、久しぶりの再会となったわけです。
展示目的では、木で彫刻された、鬼のように彫られた怖い感じの釡神様がメーンでした。しかし私の実家には木のこのような怖いものはありませんでした。ごはんを炊く釡の絵が半紙に版画で印刷されたようなものに朱印が押印されたものがおなじみでした。
木のお面のような木工の神様は、確かに幼少期に見たことがあります。地元の名家、旧家の「大きなおやしき」の高いところに黒光りしながらデン、と飾ってある威厳ある神様という認識でした。何が来ても、ちゃんと守ってくれそうな、効果絶大な守り神という風情があります。
この釡神様の文化を継承しようと加美郡の方たちが展示会をしていたようです。とても詳しく説明をしてくださいました。彫刻の実演もしていたようで、時間帯が最終日の最後の客だったせいか、ものすごく丁重にしていただいて恐縮しました。
それによりますと、この火伏の神様である釡神様は、なんと、三陸地方とか宮城県内でもごく一部の風習だった・・・。ということなのでした。えっ?そんな狭い範囲の神様だったの?
私にとっては、釡神様が台所になんらかの形で火事にならないように見守ってくださっているのが当たり前でした。仙台では神様の視線の無いところで調理をする落ち着かなささえあったというのに・・・。そこそこのショックです。お札を販売している神社もごく限られたところだけだとか・・・。
神様でも、全国共通じゃないことってたくさんあったんですね。木工の大きな釡神様はとてもすばらしい迫力です。ぜひ、ご利益が全国区に広まればいいな。と思います。
※ちょっと調べてみましたら、宮城県の神社庁のホームページでお正月に頒布するお札のセットの中に実家にあった釡神様のお札がちゃんとありました。4つの柱の神様のところをもっと詳しく調べるボタンを押して出ました。「奥津彦神奥津姫神」とありました。これでいつでも釡神様とはお会いできることがわかりましたから、まずは一安心です。
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