減額 管理会社ヒラ社員編
嘉子の読み物。減額の創作シリーズ続編です。お待たせしました。月末でちょっと忙しく、更新遅くなりすみません。さていよいよ、舞台は内部に切り込みます。
管理会社の若いヒラ社員は、このごろ、悩みにとりつかれてしまっています。家賃値下げの噂がついに、疎遠だった入居者たちの間に瞬く間に、広まったからです。今日も、大家さんが本当は家賃を値下げしていたことを知った入居たちからの度重なる指摘に、どう回答したらいいのか困惑しているからです。社長と専務の命令で従ったのですが、自分は本当は「預かり金」で「家賃の値下げ分」を会社にプールするのはイヤだったからです。
若い社員どおしで、居酒屋に行っては愚痴のひとつも言いたいところですが、最近の給料はそんな付き合い酒すらガマンが必要な景気ですから所帯持ちの先輩社員に相談することもままなりません。下手につるむと、オレの悪口を言っただろう!!とかなんとか因縁をつけられかねません。神経質な上司ににらまれるから怖くてうっかり仲良くなったところを見られたりしたら大変です。ヒラの社員にはグチのはけ口すらないのです。
「アン時、先輩がちゃんと社長を止めてさえいてくれたら、オレはこんな苦労しなくてすんだはずじゃないか。こないだだって、社長にちょっと挨拶が遅れただけて、たっぷり1時間もお説教をくらったしな・・・。」ヒラ社員は愚痴が始まるいつもスタートにスイッチが入ってしまいました。「オレは今度こそこの職場で頑張るんだって、入社の時に誓ったんだ。こんどこそ、一日でもこの職にしがみつかないと、正社員のクチなんて無いから・・・。ったく。当たり前に給料貰ってりゃいつだって辞めてやれるのになあ。社長と専務たちはいいよな。」
ヒラ社員は思いました。連日のように、役員会議はホテルの一室で豪華に相談しています。何のための会議かは、ヒラのオレにはわからないけど、こんなにクレーム処理をしていても、オレに食わしてくれんのは焼き鳥1本がせいぜい。ご苦労さんの一言だってないぜ。それも、一時間もかけて事務員を買い物に使いに出して、やっと食べさせてもらったことがあるくらい・・・。しけてんだよな。あいつら。何やってんだよ。毎日毎日。せめて3本くらいは食いたかったよな・・・。うまいもの食ってるだけあって、アノ店の味だけは良かったからな。(笑)
家賃値下げの文句は社長と専務はだんまりを決め込んで、上役のくせにオレを助けてくれたことなんかなかったじゃないか。面倒なことはオレに全部押し付けるばかりなのに、一番働いてるオレにはいい目だけはないんだからな。・・・。不況で就職先は無いから我慢するしかないのかな。それとも、やっぱり新しい職を探そうか・・・。それとも、腹いせに・・・・。
問い合わせの説明続きで疲れきったヒラ社員の彼の心の中は、またも、ぐるぐると同じところを果てしなく悩み続けるのでした。
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