2009/08/01 11:35:20
処女が三年後に生んだ石は神様だった。
美濃の国水野郷楠見村に22〜23歳の女子がありました。女子は未だ嫁がずして身籠った。この女性は何と三年後の桓武天皇の時代、延暦元年の春二月下旬二つの石を産んだ。
この石は、ほぼ五寸くらいの立方体だったという。一つは青と白のまだら模様の石だった。いま一つは全部が青い色をしていた。
この不思議な石は「年ごとに増長す。」とあるので、段々大きくなったとみられる。近くには岐阜市があり、そこには大神が祀られていた。
その大神の名前は「伊奈婆」と呼ばれていた。ある時、大神は巫女に乗り移って言った。
「その産める二の石は是我が子なり。」
この託宣により、その女の家の中に神籬を造り祀る事にした。
往古より未だかって見たことも聞いたこともない事である。是また我が聖君の朝廷の奇異(あやしき)事なり。
と結んでいる。
この記事を収載する書物は、一般に「日本霊異記」と呼ばれ、幾多の古典に引用されている。原文には「日本国現報善悪霊異記」とあるから、これが正式なタイトルであろう。
「現報善悪」とは、善も悪も報いとして実際に顕れるという事でありましょうか。
本書は一言でいえば、仏教説話集などと言われるようである。序には、奈良の薬師寺の僧、景戒が書いたとあり、上中下の三巻からなっている。
怪奇な現象・奇怪な説話を集めて紹介しているが、その原典は知られていないようだ。
雷を捉まえた話、女が空を飛んだ話、狐を嫁にして子を産ませた話など、多くの説話を集めているので、何らかの原資料があったと思われる。
中巻は 「霊験説話集」なるものが、根幹となっていると言うが詳しいことは不明である。また本書には聖徳太子も登場するが、特別にカリスマを造るような飾ったストーリーにはなっていない。
却ってその方が真実性といったものを投げかけてくる。
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