2021/05/07 17:50:12
扇子腹 一人腹
これは図書館で借りてきた浅田次郎さんの短編集です。
完全な創作のようです。跡取り婿の非行を自分の切腹でお家の安泰を図ろうとし、又妻や娘などから切腹を迫られ、結局はしなかったという話です。
切腹などむやみやたらにできるものではないし、「武士道とは死ぬこと。」と言う掟など、幕末になるとあまり守られなかったようです。
この小説の中で「扇子腹」「一人腹」と言う言葉が目につきました。
切腹と言うと、まず左腹にぷすっと刀を突き立て、横一文字に腹を切り、更に縦に切り下ろし、しかる後に、手を腹に突っ込み内臓を引っ張り出し、それを周囲にばらまくというイメージでしたが、戦闘の機会が無い時代になると、三方の上に刀の代わりに扇子を置き、介錯人が首を切り落とすだけ、つまり単に斬首と同じです。この方が手っ取り早く合理的ということでしょうか。
新選組の近藤勇が武士であるにも関わらず、流山で切腹でなく斬首になったというのは、官軍から恨まれていただけでなく、時代の流れでこのようになったのかもしれないと思った次第です。
一人腹というのは、処刑なら介錯人が付くが、自分の都合?(名誉を守る、家を守る)で腹を切るとき、介錯人のなり手が居ないときにするもののようです。考えようによっては自殺幇助というよりも殺人ともなりかねないですから、頼まれても手を挙げる人は居ないということでしょうか。
町人の中には「赤穂浪士も扇子腹同様だったらしい。」というものもいて、そうかもしれないと思ったりしました。切腹の様子が録画されているわけでもないですからね。
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