見上げてごらん
先週の休日に銀座へ出掛けた際に、久しぶりに銀座ライオンでひとりランチをした。
若い頃はよく通ったビアホールであるが、来店はもう何十年ぶりである。11時30分の開店前にはすでに長蛇の列が出来ており、店内に入ると「登録有形文化財に登録」を祝うポスターが誇らしげに掲げられていた。席に着き、まじまじと見上げるとなかなか趣のある店内だったことに初めて気が付いた。
若い頃は興味が無かったのか?
訪れていた頃は建物も私もまだ若かったのか?
見上げる余裕すら無かったのか?
そんなことを考えながら、天井を眺めつつ、混雑したお店では長居無用とばかりに生ビールをグイっと飲み干して店を出た。
【明日3/1(火)〜3/2(水)は当社連休となります】
映画:「ドライブ・マイ・カー」
第94回アカデミー賞で日本映画史上初となる作品賞にノミネートされた映画「ドライブ・マイ・カー(2021年公開)」を観に行った。
【解説】村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督・脚本により映画化。舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。主人公・家福を西島秀俊、ヒロインのみさきを三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音を霧島れいかがそれぞれ演じる。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を受賞したほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年・第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされたほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネートとなる快挙を達成。第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など、全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。
ドローンではないロングショットでの走行シーンに赤いサーブ900がよく映える。主人公を始め、小池栄子似のドライバー他多くの登場人物に喜怒哀楽がないのが特徴で、前半まで淡々とした流れにも関わらず時間を忘れるほどだったが、舞台にも丁寧に時間を割くので次第にお尻に痛みを感じ始め、終盤のエピソードでさらに痛くなる。手話の女優さんとご主人、夫婦の営みシーン、「分別はしっかりして下さい」と忠告する台詞、最初後部座席に座っていた主人公が後半から助手席に移動する距離感の変化は良かったが、タイトルにあるようにもう少しドライブに趣を置いてくれればラストが駆け足にならずに、もう少し違った感想になった気がした。そもそも冒頭で「目撃」した時点で何も言わなかった夫にどうしても感情移入が出来なかった。感情を露にすることは時と場合によって必要であって、無表情・無反応・無関心はやはり罪なんだろうな〜と感じた三時間上映だった。
今年もし作品賞を受賞すれば「パラサイト(2020年)」、「ノマドランド(2021年)」に続き、私自身受賞前鑑賞作品三連覇となるのだが果たして・・・
ラストダンスは私に
昨日母の家族葬が終わった。
先週義姉から連絡が入り、妻と向かう。ベッドに横たわるやせ細った母と対面。まだぬくもりの残っていた母の頭を撫でる。父の時もそうだったが親の逝去は何とも現実的ではなく、とても不思議な感覚になる。帰り道、車窓から見えた夕暮れの東京スカイツリーはいつもより綺麗に見えた。
ジャズ音楽、シャンソンの他に玉置浩二やジャンルを問わない音楽や映画、芝居、川柳や手紙を書くのが好きな伯母同様ハイカラな人で、ビールをこよなく愛し「肉を食べなきゃ元気が出ない」といつもパワフルに言っていた。改めて私の趣味や趣向は母の血を脈々と受け継いでいることを改めて知る(お酒は除く)。19歳で当社に入社し、2016年1月に母が退職するまで約31年間同じ職場で過ごした。意見の食い違いも多く、親子だけに喧嘩ばかりしていた。もし盆暮れだけ顔を見せる親子の環境であれば、優しい言葉のひとつも掛けられたかも知れないが、母と色々と話した膨大な時間は楽しいものだった。
葬儀前に何気なくレコードショップに寄った際、母が好きだった越路吹雪のCDがいきなり目に飛び込んできた。膨大なCDがある中でなんとも不思議な偶然にこーちゃんで送ってくれってことだろうとCDを手にして、自宅で改めてこーちゃんの楽曲を聴き直す。「サン・トワ・マミー」「ろくでなし」「愛の讃歌」「オー・シャンゼリゼ」「雪が降る」・・・どの曲にしようか?と迷うこともなく「ラストダンスは私に」を鎮魂歌として会場に流して頂き、棺にそっとCDを入れた。葬儀後に事務所の父の遺影に報告する。「母さんが間もなく行くから、色々と『身辺整理』しておいてね」と・・・
享年93歳。実に粋であっぱれな大往生だったと思う。本当に色々と有難うね。
故人の生前からの希望もあり、家族のみで葬儀を執り行いました。生前のご厚情に心より感謝申し上げます。本来ならばすぐにご連絡申し上げるべきところではございましたがお知らせが遅くなりましたことお詫び申し上げます。なお、香典・弔電・供物・供花につきましては固くご辞退させていただきます。
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